「テコンV(76年版)」

(劇場用アニメーション 1976年度韓国作品)

ビデオジャケ写。下段中央の金髪さんがお目当て。

今回のお題は韓国のアニメ、テコンV(1作目)です。
当地でも83年の初版以来再ビデオ化はされていないらしく、局地的には高い知名度を誇りながら実際に観た人は意外と少ないようです。管理人も某新宿ビデオマーケットにあった、三作目にあたる「〜'84」をレンタル視聴はしていたのですが、何としても1作目を観たいと秋葉原やネットを漁ったものです。

なぜならロボ娘さんが出ている(らしい)から。

とはいえ現地でもビデオ版はレアとされており、捜索は難航を極めました。が、意外な所で全編を視聴することが出来ると判明したのです。それはテコンネット、テコンドーの総合サイトです

このTaekwonNetというのは、かなりオフィシャルな性格のサイトらしいです。例えていうなら日本サッカー協会のサイトで「キャプテン翼」を視聴できる、という感じ…なら解るのですが、むしろ極真空手のサイトで、「空手バカ一代」ではなく「闘将ダイモス」をやってる、という感覚に近い気もします。幼年者のエントリー用コンテンツとしては正直どうか、と海外在住の完全な部外者にも思わせずにはおきません。
ともあれ、ほぼ全編が無料(途中でテコンドーのプロモーションCMが入るので、これがスポンサードなのでしょう)でストリーミング配信されてますので、興味が湧いた向きは一見しても宜しいかと。簡単なエントリーが必要となります。

ストーリーは3歳児でも判る平明さですが、固有名詞は今一つ判別できなかったのでこのサイトの呼称に準じています。

ストーリー
OP。少年合唱団によるメジャーコードの脳天気な、だが一度耳にすると嫌な感じで頭から離れなくなる主題歌をバックに、本編からの流用映像が流れる…のはいいとして、早速謎の美少女がメカバレするシーンが。本編が始まる前から登場もしていないキャラクターの正体をいきなりばらしてしまうという強気の演出がイカします。

テコンドーの世界大会に備え山篭りをしていたテコンドー少年フン。その修行も終わりに近付いた頃、会場まで送る為に天才科学者である父、金博士が迎えに来ます。この親父さん、イノセントな善人である事を強調する演出なのか、山に入るなり動物達に一斉に懐かれまくります。人徳者ですね。

そして大会。順調に勝ち上った決勝戦では若干の苦戦を強いられつつ、必殺のネリチョギにてライバルに勝利を収めます。やったぜフン、世界チャンピオンだ!因みにこの一連の試合のシークエンスはかなりしっかりとキャラが動き、テコンドーの試合を見事に描写している為、ひょっとしてコレ結構凄いアニメ?という幸せな誤解を一瞬与えてくれます。恐らくロトスコープで実際の試合をトレースしているのだと思われますが、この技法はここのみで息切れ。

左から、金博士、フン、メリ。

 だがフンたちが喜びに浸っている裏では、巨大な策謀が蠢きはじめていました。フンが決勝戦で破ったライバルを始め、格闘技の猛者達が次々と何者かによって拉致された、というニュースも、その先触れに過ぎなかったのです。さらに政治の中枢部が襲われ、会議中だった重要人物達がまとめて誘拐される、という事件も続きます。
 
金家の自宅を兼ねているらしい巨大ロボット研究所に帰宅したフンと博士の元に、ある日メリと名乗る謎の美少女が訪ねて来ます。視聴者はもう彼女がアンドロイドか何かである事を全員知っていますが、構わずにメリは二人に身の上話を始めます。

 彼女の父、カーフ博士は、金博士に匹敵する天才科学者で、お互い良きライバルとして認めあっていました。しかし、彼の短躯、形相などの外見的要因と、話し下手とが災いして学会ではバカにされ軽視されていたのです。ルサンチマンが鬱積したカーフ博士はついに正統アカデミズムに背を向け、陽の当たる世界を歩んでいる金博士とも絶縁し、何処とも無く姿を消してしまったのです。残されたメリは途方に暮れ、父の旧友である金博士を頼って来た、というのです。ちなみにこの回想シーンで、カーフ博士の嫉妬と羨望の的としての金博士のイメージには、これまた大量の鳩が懐いて周りを乱舞しています。つくづくどんな人なのか解りません、金博士。それを羨むカーフ博士もいかがなものか。

悪だくみするカーフ博士。

メリの身の上を同情した二人の好意で、メリはしばらく金家に留まる事になります。
それはいいのですが、なぜか、メリは日常生活においても腰に「長剣」を下げっぱなしにしているのです。人様の家に寄食している身分で常時武装しているのです。あからさまに怪しいです。しかし根っからイノセントで善人な金博士はそれを指摘するどころか気にする素振りも見せません。人徳者です。

果たせるかな、ある晩メリはスキを見て研究所の中心部に忍び込もうと行動を開始します。しかしその直後、なんの工夫も無く普通に入り口のドアを開けようとして防犯装置に引っ掛かり、昏倒。この際片腕が破壊され、ロボットの正体が露呈します。ああ、オープニングのシーンはここでしたか。
ともかくスパイ活動のスの字にも至らないうちに史上最短記録で任務に失敗したメリは、更に機能停止したまま金博士とフンに内部構造までばっちり解析されてしまう始末。なおこの解析シーンの透視図で、メリのポニーテールには内部メカが詰まっている事が判明(*1)。

 ここで金博士は、ただメリの腕を修理しただけで全く正体を詮索したり彼女を責めたりしません。息子のフンも負けずに、「君がロボットでも気にしないよ、だからもう悪い事はやめるんだよ?」(多分)などとメリに諭すように話し掛け、親子揃って気持ち悪い程のお人好しっぷりを発揮します。家風なのでしょうか。メリもその優しさにほだされそうになります。でもここで急を聞いて駆け付けたフンの彼女(ヒロイン)登場。肩に手を廻してメリを説得するフンの姿を目撃(*2)、誤解したヒロイン(名前が判らない)は、「ロボット風情が気分だしてんじゃないわよ!」(多分)と激しくメリを非難します。メリも逆ギレし、例の長剣を振り回して散々暴れた挙げ句、泣きながら家を飛び出していってしまいます。結局、正体を隠して忍び込んだ意味は全くありませんでした。

そして深夜。メリは謎のロボット兵士軍団を引き連れ、再び研究所に舞い戻って来ます。今度は強行突破で研究所の中核に踏み込むと、金博士に製作中の巨大ロボット「テコンV」を差し出すように要求します。最初からそうすればいいのにと思わずにはいられない手際の良さですが、拒絶した博士を先走ったロボット兵士が撃ってしまいます。ただ脅すだけのつもりだったメリは動転してそのロボット兵を破壊すると、慌てて別の試作ロボットの設計図だけ盗んで撤収、またしても任務失敗。

任務失敗!

(*1)メリのポニーテールには…

(*2)ヒロイン、足だけ。顔はパッケージ参照

銃声を聞いて駆け付けるフン、しかし金博士は既に虫の息です。抱きかかえるフンの腕のなかで博士は「テコンV」をお前に託す、これがあればお前は神にも悪魔にもなれる、と(多分)そんな事を言い遺すと事切れます。

緊迫の後編に続く

パイルダー(仮)は二人乗り。本体にもコクピットがあるので別行動も可能だ


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